Ride&Fish

2023-04-28

第2回:ライド&フィッシュの本命対象魚!?和歌山県・紀の川のシーバス

どんな釣り・どんな自転車でも自由に楽しめる、ライド&フィッシュ。けれども、より釣果を求めると必然的にライド&フィッシュに行き着く、そんな釣りも存在します。今回紹介する都市型河川のシーバスは、まさにそれ。春の好釣シーズンに合わせて、関西シーバスのメッカ、和歌山県・紀の川でライド&フィッシュしてきました。


都市型河川でライド&フィッシュが有効な理由として、その機動力が挙げられます。広い河川の限られたポイントを効率よく巡るには、自転車がうってつけ。歩いてポイントを移動しているその時間すら、ルアーを投げたいのが釣り人というものです。


また、クルマと違って駐車場所に縛られることなくポイントにダイレクトに入れるのも強み。駐車場の限られた都市型河川では、そもそもクルマを駐める場所とポイントが離れていることのほうが多いのです。


そんなわけで、テンポよく移動していく釣りのスタイル「ラン&ガン」を自転車に置き換えて、「ライド&フィッシュ」でシーバスを狙います!



期待に胸膨らませ和歌山へ!


今回、指南役としてご登場いただいたのは、デザイナーにして凄腕シーバスハンターの前田大介さん。自身のブランドで釣りに関連したアイテムを手掛けるほどの、シーバスフリーク。今回の釣行前にもポイントに通ってチェックを重ねたというから心強い限りです(ありがとうございます!)。理論的なその釣りスタイルは、専門誌でも紹介されているのだとか。


「この時期は雨が降って濁りが入ると、ベイトフィッシュとそれを追ってシーバスが海から入って来るので狙い目です。数日前の雨で少しは入ってきていると期待してますが、水が思ったよりも澄んでいるので厳しいかもしれません」


春先は少しの気象の変化が大きく釣果を左右する時期。ライド&フィッシュでのシーバスデイゲームを日の出と共にスタートしたのでした。



自転車もロッドも、「たためる」がキーワード!


今回の使用バイクは、シマノスクエアの散走イベントでもお馴染みのDAHONとTERNのフォールディングバイク。クルマに積むのも、折りたたみ自転車なら2台をラクラク収納可能で、別にルーフラックなどが必要ないのも嬉しいところ。小径車なので取り回しも良くて、荷物の増えがちなライド&フィッシュでもストレス無く移動ができるのです。



普段は700Cのグラベルロードに乗る僕も、DAHONのしっかりとした作りと走りの良さに、これはライド&フィッシュの強い武器になるなと確信。特に大河川のポイントをつなぐ走り方なら、サイクリングロードを使えるので路面の心配は不要。テンポよく釣り走っていけそうです。


そしてライド&フィッシュの要と言えるのが、パックロッド! 近年のパックロッドの進化と充実には、目を見張らされます。この日のチョイスは、〈ディアルーナ MB S800L-4〉。4ピースでたためばバックパックに収まるサイズ感。自転車もロッドも、「たためる」スタイルで、いざ実釣!


春先のルアーローテーションのコツ


和歌山市内を流れる紀の川。対岸に町並みを見ながら、時おり高架を走っていく南海電鉄の音を聞きながらルアーを投げ続けます。


朝一番に前田さんが選んだルアーは、〈エクスセンス アガケ 95Fジェットブースト〉。水面付直下をもこもこと動くルアーでやる気のあるサカナを狙います。このルアーを選んだのは、シーバスが食べているベイトフィッシュに合わせるためで、ハクと呼ばれるボラの稚魚を想定しているとか。



「時期的にハクを食べていると思いますが、その場合食い気のあるシーバスは、このルアーの引き波の動きに反応することがあるんです。ただ朝イチで反応が無かったので、〈シャローアサシン〉にチェンジ。水面から5cmくらい下のレンジをゆっくり漂わせて引いてみましたが、これも反応がありませんでした」


その後に前田さんがいきなり小さいルアーを投げ始めたので驚かされましたが、これも前田さん流のシーズナルパターンに組み込まれたルアーローテーションだとのこと。


「次は一気にサイズを小さくして、〈ライズショット37F〉に。これはメバル用のプラグですが、ハクに依存しているシーバスに浮かべておくと効くことがあるので試してみました」


と、ここまででも分かる通り、前田さんの釣りは徹底して理論に基づいたルアーローテーションが特徴。「なんとなく」ルアーを投げることなんて無さそう。すべてのキャストに、意味があるのでした。


これまでも何度か釣りの名人とご一緒させてもらって、それぞれにキャラクターや釣りへの姿勢は異なりましたが、共通しているのは、とにかくタックルが整然としていて、スムーズに釣りができるよう細心の注意が払われていること。前田さんは「魚との唯一のコンタクトポイントですから」とフックにも気を遣うが、その収納の美しさにもため息が思わずこぼれます。美しい…



日も高くなってきましたが、なかなかアタリの無い我々。紀の川本流から、お昼ごはんも兼ねて自転車で町中へ向かいます。


町中の川で嬉しい一匹が飛び出す!


町中を流れる紀の川の支流に架かる橋の上からポイントをチェック。なんとなく、魚がいそうな雰囲気が…。



「ちょっと竿を出してみましょうか」と前田さん。


こんな風に、行き当たった場所ですぐに釣り竿を出せるのも、ライド&フィッシュならでは。そしてそんなポイントに、ドラマが待っていたのでした。


先ほどまでルアーを投げていた紀の川本流に比べると、この支流は水路といった趣き。橋の上から、「こんなところで何が釣れるんかいな?」と我々に視線を投げかけるのは道行く人たち。


「キタッ!」


振り向くと前田さんのロッドがいい曲がり! 落ち着いたファイトで暴れる魚をいなすと、水面に顔を見せたのはいい型のチヌでした。無事にランディングに成功すると、前田さんも安堵の笑顔を浮かべました。



「橋の影にいるだろうと思って、バイブレーションを投げ込んでリフト&フォール。そうしたら一回チェイスしてきて。距離が足りなくて帰っちゃいましたが、もう一度投げたらまた出てきて。最後は止める動きを混ぜたら食ってくれました。あぁ、嬉しい」


渋い状況下で顔を見せた魚にしっかりと口を使わせた流石のテクニック。そして誰よりもこの日にかけてきた前田さんが、とにかく魚を釣り上げることができたことにほっとした様子。


そして本命へ…


このチヌをきっかけに、本流よりも支流の小さいポイントに魚が入っているのではと仮設を立てる。自転車の機動力を活かして別の支流へ。


すると結果はすぐに出た!



ヒットルアーは〈サルベージソリッド60ES〉。数々のルアーをローテーションし、魚の反応と川の状況を見極めた上でシーバスにたどり着いたのでした。


「捕食モードでベイトを追いかけているシーバスではなく、川のカーブで休んでいるタイプの魚を狙って、バイブレーションをチョイス。ボトムまで沈めてボトムを引っ掻きながらミディアムリトリーブで広く探りました。
シーバスのテリトリーにルアーを通してリアクションバイトを誘う狙いが的中しましたね」と前田さん。


自転車での移動も含めて、ナイスな一匹と出会うためのプロセスを楽しんだライド&フィッシュ。前田さんも自転車の機動力を、釣果を伸ばす武器になると感じたようです。


ゴールデンウィークには各地でさらにコンディションの良くなるシーバス・ライド&フィッシュ。みなさんもお住まいの地域で、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか?


ちなみに僕はボウズ……(涙) 精進あるのみ!


この日のライド&フィッシュの動画があるので、こちもご覧ください!


Photo & Text by Yufta(小俣 雄風太)